076980 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Lee-Byung-hun addicted

Lee-Byung-hun addicted

最終話


『Fly me to the moon』 完結編 最終話  ・・・とあとがき


遥は涙が止まらなかった。自分の実の母から20年ぶりに届いた手紙にはたくさんの愛が溢れていた。揺の遥への愛はもちろんのこと、揺のビョンホンへの愛、友人、家族への愛
そして皆の遥と揺への愛。とても死を目前にした人が書いた文章とは思えないほどその手紙は希望に満ちていた。
「私を産んでくれたお母さんは・・・とっても素敵な人だったのですね。」涙でグチャグチャな顔をした遥から最初に出たのはその一言だった。
「ああ。君のお母さんは僕の人生のすべてだった。そう思えるほど素敵な人だったよ。」
(全く、君って人はずるいよ。こんないい役を独り占めしちゃって。俺は完全に脇役じゃないか・・)ビョンホンはニャッと笑う揺を想像して涙をポロポロ流しながら微笑んだ。
「おじ様が・・・お父さん。なんですよね。」遥はビョンホンに向かってためらいがちに言った。
「・・・・」ビョンホンは黙って頷いて隣に座っていた遥の頭を自分のほうに引き寄せた。
そして髪にキスをした。
「そう。僕が・・・君の父親だよ。本当にありがとう。揺を生かしてくれて。君は本当に揺に良く似ている。こうしていると揺が生き返ったのかと思うくらいだ。君は今、久遠寺遥さんだけど、君が僕と揺の愛し合った証しだということには変わりはない。」ビョンホンは自分に言い聞かせるようにそういうと遥の肩を抱き、空を見上げた。
「私・・・今不思議ととっても幸せな気分なんです。今の父と母と血が繋がっていないことがわかってもちっとも寂しくない。むしろ父と母の愛を強く感じているかもしれません。それに・・・」
「それに?」
「それに加えて産んでくれた母の愛と20年間ずっと母を忘れずに一緒に生きてくれた父の愛を全身にヒシヒシと感じるんです。私はこの世の中の誰よりも多くの愛に包まれているのかもしれない。」
ビョンホンの目からはまた涙が溢れ出し始めた。
「ああ。そうだね。皆に感謝しよう。僕の娘はこんなに愛されて本当に幸せだ。」
二人は見詰め合って微笑んだ。
そしてビョンホンは軽くため息をつき切り出した。
「で、テプンのことだけど・・」
彼がそういうと遥は急にクスクスと笑い始めた。
「どうしたの?」と不思議そうなビョンホン。
「実は、驚かないでくださいね。私、テプン君とこの間キスしたんです。」
「えっ、」ビョンホンに遅かったかという後悔の表情が浮かんだ。
「でもね。不思議なんですよ。全然ドキドキしなくて。まるでパパとキスしてるみたいな感じがして。今日わかりました。それがどうしてだったのか。彼は私の弟なんですものね。」
遥はそういってビョンホンに笑いかけた。
穏やかな表情でビョンホンは黙って頷いた。
「あいつには僕から話すよ」
「黙っていればいいんじゃないんですか。彼には私が話します。『弟のようにしか思えない』って。この間の彼の感じだと彼も同じようにママとキスしたように感じてた気がしますから、意外に簡単だと思いますよ。」遥はさらっと言った。
笑うビョンホン。
「?」
「そういうところ、揺にそっくりだから」
「そうなんですか?何か嬉しいな。おじ様。これからもお父さんじゃなくておじ様でいいですよね。」
「ああ、もちろん。」ビョンホンはその言葉に遥の彰介とウナへの感謝の気持ちを感じ、そんな心配りが出来る我が娘を誇りに思い嬉しかった。
「おじ様、これからは揺さんの思いは私が受け継ぎますからおじ様は気兼ねなくおば様と幸せに過ごしてくださいね。」
「何だかちょっと寂しいな。揺と遥ちゃんにのけ者にされてるみたいで」
ビョンホンはちょっと不満げに言った。
「忘れてあげることも愛なんじゃないですか?」
「?」
ビョンホンはその一瞬、遥が揺になったと感じた。
間違いない。『忘れてあげることも愛だ』と言ったのは揺だった。
(揺・・・全く君って人は自分勝手だ。覚えてろって言ったり忘れろっていったり。今度はどうしても僕に君を忘れて欲しいんだね。わかったよ。君が望むならそうするよ。君は僕のすべてなんだから。・・・)
「そうだね・・・そうかもしれない。じゃあ、揺のことは君に任せるよ」
ビョンホンはにこやかに笑ってそういった。
果たして忘れられるのだろうか。この歳になってもまた挑戦しろなんて。相変わらず人使いが荒い女だ。・・・そういいながらまた彼女のことを考えている自分が可笑しかった。
「私、字幕翻訳の勉強、真剣に始めます。英語と日本語と韓国語には自信があるし。父と母の仕事も手伝えるから。それに揺さんと同じ仕事だもの。きっと向いている気がするんです。」遥は明るく言った。
「じゃあ、一人前になったら僕の映画の字幕お願いしようかな」
「わ~~。デビュー作が映画俳優イ・ビョンホンの作品なんてすごいです。あぁ~~
今からワクワクしちゃう」
「真面目に勉強しないと発注しないよ。」ビョンホンはそういうと遥のおでこを指でこづいた。
「了解です。おじ様も字幕のつけ甲斐のあるいい作品作ってくださいね。」
「こいつ~~生意気なっ!」
(全く、揺にそっくりだ・・)
また、彼女のことを考えてしまう自分に笑ってしまった。
本当に君の事を忘れられるのか・・・それとも実は君も忘れて欲しくないんじゃないか?
ビョンホンにはペロッと舌を出した揺が見えた気がした。
真実はひとつではない・・・揺の眠る沼を見つめながらビョンホンはそうつぶやくとにこやかに微笑んだ。

Fin
               
・・・・いかがでしたでしょうか。
自分で書きながらただ悲しい物語は書きたくなかった。
そしてこんな結末を選びました。
そう。真実はひとつではないのです。

またいずれ、幸せに結婚するビョンホンssiと揺のお話をUPする日も来るかもしれません。
そんな日が来たらまた皆さん二人を温かく見守ってあげてくださいね。

ここまでお付き合いありがとうございました。
ビョンホンssiと揺に成り代わりましてお礼申し上げます。




© Rakuten Group, Inc.